性感染症に関する質問で、”自然治癒があるのか?”という質問は意外にも多く寄せられます。特に梅毒の場合にこの質問が多いのは、見に覚えが全く無いにも関わらず過去に梅毒に感染したことがあり治癒していると診断される人がいるためです。

梅毒の検査方法は大きく分けると二つありますが(梅毒検査方法)、そのうち梅毒トレポネーマ(TP)抗原を利用する方法(FTA‐ABS・TPHA)は一度梅毒に感染すると生涯陽性を示します(早期梅毒ですぐに治療を開始した場合稀に陰性になるという報告もありますが、滅多にありません)。そのため、一つの検査法(STS)が陰性でもう一つの検査法(TP抗原を利用する方法)が陽性の場合、過去に感染したが既に完治済みという判断になります。

この診断をされた場合、過去に治療経験があれば分かりますが、全く見に覚えが無い場合は自然治癒したのかなと思うのは当然だと思います。

梅毒の治療は抗生物質によるものなので、他の病気の際(風邪など)に処方された抗生物質で治ったのではないかという記事を見かけます。しかし、性感染症学会のガイドラインでは第一期梅毒での治療は2週間〜4週間、第二期梅毒での治療は4週間〜8週間、第三期以降の梅毒治療は8週間〜12週間と治療期間が長いため、他の病気の際に処方される程度の抗生物質で治る可能性は非常に低いと考えられます。

さて、それでは肝心の自然治癒ですが、実は国立感染症研究所・感染症情報センターのウェブサイトにはこのような記載があります→「梅毒の臨床症状、 検査と診断、 治療」

「大半の患者は無症候梅毒で終始し自然治癒していると考えられている。また、 顕症梅毒においても自然治癒があると考えられるが、 正確な統計はない。」(本文「臨床症状」の中より抜粋)

国立感染症研究所の見解によると、正確な統計はないものの自然治癒している可能性を示しております。

ですので、結論を述べると自然治癒はあり得るということになりますが、やはり正確な統計データがあるわけではないようなので少しでも感染の疑いがある場合は早急に検査、治療を受けましょう。